岐阜県美濃加茂市にある「中部国際医療センター」。地域において高水準の医療を提供することはもちろん、「世界に通用するハイレベルな医療を提供する」という決意のもとで日本、そして世界を視野に入れた最先端の治療を行っています。
同センターでは2024年10月から「ふるえ・パーキンソン病外来」を開設し、ふるえの症状でお悩みの方を対象にした診療を提供。今回はセンター長を務める中坪大輔先生に、この取り組みに込めた思いや今後の展望などを語っていただきました。
中部国際医療センター 機能神経外科 部長
ふるえ・パーキンソン病センター センター長
Q10月に外来を始められてからの反響はいかがですか?
A
まず、岐阜県にはこれまでパーキンソン病や振戦の治療をやっている施設が少なく、困っている患者さんが愛知県まで来ないといけないといった課題がありました。
このセンターを開設してからは「ふるえの症状に対していろいろな治療法を提案しますので、ぜひ来てください」という形で呼びかけを行っており、
専門外来が近くにできて嬉しいというお声をたくさんいただいています。
12月より、集束超音波治療(FUS)や各種手術も同時に始まり、
患者さんにとって「近いところで、自分の症状に対して何ができるかの選択肢を知ることができる」という安心感を提供していきたいです。
ふるえの症状が出て病院に行ったけれど「果たしてこの治療でいいの?」と迷っていらっしゃる方、また「病院でも原因がわからなかった」という方々がまだ大勢いらっしゃいますので。
中部地方でFUSを導入済みの施設は、現在中部国際医療センターを含む3施設。
Qふるえの治療について、現在課題だと思われる点は?
A
まず、症状についての情報が周知されていないことが一番大きな課題だと思います。
10年手がふるえていても、そもそも「年齢のせい」だと考えて病院を受診されない方が本当に多いです。
私たちもセンターを開設してから11月に市民向けの公開講座を行いましたが、
患者さんに「ふるえ症状の治療法があります」という情報を伝えるにはさまざまなアプローチをとることが大事だと思っています。
開設当初は岐阜県内の新聞にも掲載されました。今後はホームページやその他媒体でも積極的に発信していきたいです。
最近では60~70代の方もYouTubeなどを観ていらっしゃいますし、ご自身で観なくてもご家族から「こういう治療があるらしいよ」というお声がけをしていただくだけでかなり違うと思います。
2024年11月に岐阜県の同センターで開催された、市民の方向けの公開講座。
Qふるえ症状があっても病院にかからない方がいらっしゃるのは、なぜなんでしょうか?
A
パーキンソン病などは5~10年で症状が悪化したりしますのでどこかのタイミングで受診される方が多いのですが、ふるえの症状だけだと割合が下がりますね。
ふるえることで命に直結したり、動けなくなることがやはり少ないからだと思います。
ただ、軽いふるえの症状でも食事に影響が出る、今までやっていた仕事が続けられなくなり、会社を辞めてしまうなど日常生活に支障が出ている方はこれまで何人もいらっしゃいました。
ふるえの治療を行うことで会社を辞めずに済んだり、介助なしで食事ができるようになるなど、
私たちは病院の受診を通じて患者さんのQOL(Quality of life、生活の質)を維持するためのお手伝いをしたいと思っています。
ふるえの症状が「病気」であることを知っていただくことがまず重要です。
本態性振戦という言葉自体もまだまだ知られていませんので、他科の先生方も含めてしっかりと情報を周知し、院内や医療機関同士の連携も強化していく必要があります。
Qふるえ・パーキンソン病センターで今後どのような医療を提供していきたいですか?
A
まだ始まったばかりなのでいろいろと試行錯誤していますが、患者さんが「ここに行ったら何かのヒントがもらえるかもしれない」
「良くなる可能性があるかもしれない」と思っていただけるような環境づくりを心がけたいですね。
来てよかった、ちょっとは安心できた、というふうに少なからず満足してお帰りいただきたいということを、私自身もここ最近かなり意識しています。
ふるえに関してお悩みの方や、ご家族で気になる方がいらっしゃる場合はぜひまず相談を検討されてはいかがでしょうか。早めの治療が鍵となります。
※本記事は2024年12月執筆当時のものです。